7-2『侵入者のディナー』


入れ所に悩んだシーンです。

  協会の鐘楼に陣取った二人は、そこで食事を取っている。もちろん町の監視のため、その視線は鐘楼から眼下に向けたままでだ。
「ぬるくなってますね」
「冷えて体温を持ってかれないだけ、まだマシだろう」
「で、冷えてたら食えるだけマシですか?」
「ったく……」
 二人が食しているのは民生品のレトルト食品だ。容器入りレトルト飯に同じくレトルトの八宝菜をかけて中華丼にしたてた物を、プラスチックスプーンで口に運んでいる。
「まぁ、八宝菜でよかった。やたら味の濃い味付きレトルト飯、あれ嫌いなんですよね」
「お前の好みは知らん」
 鷹幅は早々に食事を終えると、出たゴミを手早く片付けて監視作業に戻る。一方、不知窪は監視作業こそ抜けなく行っているが、同時にゆったりと食事を続けていた。
「悪いが……お前、そんなんでよくアルペンレンジャーになれたな。というか、なんで志願したんだ?」
「あぁ、俺レンジャーは小隊長の見得で行かされたんですよ。内の小隊長色々面倒な人でして、ヘタに辞退やリタイアするとうるさいだろうなと思ってやってたら、結果最終想定までクリアできまして」
 飄々とした体でそんな事を言ってのけた不知窪は、最後に「空挺は知りませんけど、部隊レンジャーは志願制とか半分嘘ですよ」と付け加えた。
「なんてやつだ……」
「そうそう、課程の同期からもそんな顔されましたよ」
 空挺にも引けを取らぬと聞き及んでいたアルペンレンジャーに、こんな隊員が居る事を知り、鷹幅は自身の頭に微かな痛みを覚えた。



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